とある機関の大学職員 第2話 大学職員の仕事とは

大学に職員として採用されれば、職員としての様々な仕事が待っています。しかし「大学の職員の仕事って何をやるの?」といった方も多いのでは。そこで大学の代表的な部署の仕事内容を簡単にご紹介します。あくまで概略なのでもっとよく知りたいという方は直接近くの大学職員に聞いたり、OB訪問、インターンシップに参加するなど、直接見たり聞いたりするのをオススメします。


ちなみに呼称は一般的な例ですので機関によって異なります。
また部署ごとの仕事の分け方も機関によって異なりますので予めご了承ください。


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A.総務
総務とは「とりまとめを行う部署」です。
会議の運営や式典・イベントの企画・運営に携わります。
学長秘書や広報も一般的には総務の仕事です。


一言で総務、と言っても2パターンがあります。機関全体の取りまとめを行う一般的に言う総務と、学部の取りまとめを行う学部総務です。扱う規模が違うのみで、概ね似たような仕事をするケースが多いです。


とりまとめを行う部署という性質から、仕事の幅が広くなりがちなのも特徴かもしれません。

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B.人事
文字通り人事です。
機関として人を採用し、勤務管理をし、給与を支払い、退職時には退職金を支払う。職員を雇用しているのですから当然人事の仕事をする部署は必要です。各機関で職員を育成する際の人事戦略、研修計画等を立て、運営するのも人事の仕事です。


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C.財務
大学の会計を行う部署です。
予算・決算の処理、外部資金や交付金に関する業務などがあります。大学の予算でモノを買うときは基本的に財務の職員が何かしら関わることになります。学生の立場からはあまり目立たない部署ですが、授業料納入の窓口にいる職員は大抵財務の職員です。また、固定資産の貸付業務など、施設に関する業務を行う場合もあります。


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D.施設
老朽化した建物を改築したい。新しい建物を建てる必要がある。そんなときに活躍する部署です。
大くくりにすると施設の管理も財務の仕事ですが、施設というとやや専門的になります。例えば、建物等の新築・改修の設計、積算を行ったり、電気設備の維持・保全を行います。キャンパスの建物が不便なく利用できるのは、施設の仕事の賜物です。


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E.学務
学生課とか教務課と呼ばれる部署です。
大学に通って真っ先に目にする職員はおそらく学務の職員だと思います。履修登録のための書類を持っていく窓口であったり。成績証明書を発行してもらう窓口であったり。サークル活動の諸申請をする窓口であったり。奨学金の申請をする窓口であったり。就職相談の窓口であったり。学生に関する何でも屋、といったイメージの部署です。


窓口の仕事、というイメージの強い学務ですが、そればかりではありません。教員免許に関する書類を文部科学省教育委員会とやりとりする、など窓口以外の仕事もあります。入試業務などは寧ろ外から見えないようにしている機関のほうが多いと思います。


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F.研究支援
教員・学生・研究者の研究活動を支援する部署です。
受託研究では企業との橋渡しをしたり、国からの補助金の申請をしたり。学生よりも企業や官公庁の担当者とやりとりを行う機会が多くなります。


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G.国際交流
海外の学校や学生、研究者とのやりとりをする部署です。
海外の大学との交流協定を締結したり、海外からの研究者の受け入れに尽力します。また、この部署で留学生の支援を行う場合もあります。(留学生も学生、ということで留学生支援は学務が行う場合もあります。)


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H.医療支援
大学病院をもつ大学の職員となった場合、病院勤務になることがあります。
窓口であったり、診療報酬の計算などの経理担当であったり、病院で勤務する方の勤務管理なども行います。病院は土日も開いていますから、機関によっては交代勤務があるかもしれません。


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I.学術情報サービス
情報基盤関係業務と図書関係業務がここに分類されます。
情報基盤関係では学内の情報システムの管理運営に携わります。ヘルプデスクのような仕事をすることも。


図書関係業務は文字通り図書館の職員です。ただ、窓口業務などは非常勤や委託になっていることが殆どで、職員の人数はそれほど多くありません。


以上2つをまとめて学術情報サービスと分類することが多いですが、情報基盤関係業務は電子・情報の技術職員もしくはPCに明るい事務職員が、図書関係業務は図書の事務職員が担当することになり、相互で異動することは基本的に無いと思います。


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J.教室系技術職員
学生実験の技術指導や実験室の管理を行います。
文系の方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、理系の研究室には教室系の技術職員がついている場合もあります。自身の専門を生かして教育・研究の一番近くにいる職員、かもしれません。


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「大学職員=窓口」ではない、ということがわかっていただけましたでしょうか。大学といってもひとつの事業所ですから人事や経理を担当する職員も当然います、が、なかなか意識しづらいところかもしれません。なお、各種仕事内容についてもっと詳しく知りたい、という方は、ここでは敢えてそこまで踏み込みませんが、最近ではインターネット上などでも色々なところで情報が出ているようですので、ぜひ探してみてください。


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とある機関の大学職員 第1話 大学職員になるには 〜採用制度の違い〜

さて、今回は導入ということで国公私立を比較してみようと思います。
「大学で職員として働きたい!」という場合、考えられる進路は、

  「国立大学の職員」
  「公立大学の職員」
  「私立大学の職員」

の3種類に(概ね)分けられますが、まずはこれらの職員を、採用制度の違いにスポットを当てて見てみましょう。


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1.国立大学の職員
従来は公務員であったので、国家公務員2種もしくは3種などの公務員試験で採用されていましたが、国立大学は平成16年4月に法人化し、国立大学法人となりましたので、それ以降は、一部関係機関と合同で「国立大学法人等職員採用試験」が毎年実施されています。詳細は別途述べますので割愛しますが、概ね以下の流れになります。

  • 第1次試験(筆記試験)を地区ごとに実施
  • 第2次試験(面接等)を各国立大学法人等で実施(第2次試験の内容は各国立大学法人等で独自に決定)

この第2次試験に合格すれば、内定の連絡が来る(=採用が決まる)ようです。最終合格イコール内定(採用)、という辺りが国家公務員時代とは違うところでしょうか。

また、非公務員となったことで独自の採用を行っている機関が増えているようです。
  (例)東京大学 福井大学 など
各機関のホームページ、もしくは新卒向け就職情報サイトなどで募集を行っているようです。

 ※文中の「2種」「3種」の正式な表記はローマ数字です。


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2.公立大学の職員
法人化された公立大学とそうでない(県立などのままである)大学があります。

公立大学法人の場合、各法人ごとに採用試験を実施しています。民間企業の就職活動や、公務員試験では市役所等を想像すると近いかもしれません。例えば平成21年度の首都大学東京の採用を例に挙げると、以下の通りでした。

申込受付期間:平成21年5月1日(金)から29日(金)まで【当日必着】
資格審査合格発表日:平成21年6月12日(金)
第1次試験日<筆記試験>:平成21年6月28日(日)
第1次試験合格発表日:平成21年7月21日(火)
第2次試験日<第1次面接試験>:平成21年7月26日(日)
第2次試験合格発表日:平成21年7月29日(水)
第3次試験日<第2次面接試験>:平成21年8月2日(日)
最終合格発表日:平成21年8月14日(金)

『平成21年度公立大学法人首都大学東京 正規職員採用試験実施要綱』より

他の公立大学職員の採用についても調べてみましたが、軒並み筆記+面接2回〜、という実施形態が主流のようです。首都大学東京の場合は、最終合格しても名簿に登載されるだけで、全員が採用されるわけではない、という辺りは公務員試験に近いかもしれません。最終合格が即採用か否かは法人によって異なるようです。また、一言に筆記試験、面接試験と言っても大学ごとに試験内容もマチマチのようです。まずは幾多の公立大学の中から、ご自身が採用を希望する大学を選び、情報を仕入れる必要がありますね。


ちなみに法人化されていない公立大学の場合、基本的に公務員試験によって採用されます。例えば県立大学の職員は県の職員です。県の人事異動の一環として大学の勤務があるので、3年程度でまた大学以外の勤務になってしまうものと思われます。大学職員になる、というより、大学職員の仕事も経験できる、といった程度でしょう。


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3.私立大学の職員
私立大学においても公立大学同様、各大学法人ごとに採用試験を実施しています。中には採用が「学内限定」の大学もあったり、募集期間がまちまちであったりで、情報がなかなか集まらないようです。個人サイトで採用情報を収集されているサイトはあるようです。

(参考)大学職員への道:http://www5a.biglobe.ne.jp/~mochikin/

就職サイト等でも一部情報が掲載されています。試しに検索してみたところ、学校法人立命館の求人情報が掲載されていました。平成22年度の学校法人立命館の採用プロセスは以下のようになっていました。

【ステップ1】   リクナビ2011よりエントリー

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【ステップ2】   応募書類一式提出
             2010年3月1日(月)  受付開始
             2010年3月26日(金)  応募締切【必着】
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【ステップ3】   書類選考
           一次選考          2010年4月初旬(予定)
           二次選考          2010年4月中旬(予定)
           三次選考・最終選考    2010年4月下旬(予定)

http://job.rikunabi.com/2011/company/top/r212700069/

  
国立大学や公立大学が一部公務員試験風な要素を含むのに対し、こちらは完全に民間企業の採用プロセスといったところ。まあ、当然といえば当然ですが。筆記に挑む前に書類で落とされる、なんてこともあるかも?


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このように、一口に大学職員といっても採用プロセスは様々。各法人の採用プロセスや求人情報を知っておかなければそもそもスタートラインにも立てません。それらの情報が向こうからやってくる可能性は限りなく低いと思います。本気で大学職員になろうと思うなら「いかにして情報を集めるか」がひとつのポイントになるのかもしれません。


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とある機関の大学職員 第0話 はじめに

この連載では、大学職員になりたいと思っている方に向けて、採用制度に関することや仕事内容について解説していきます。さらに、採用プロセス等が少々特殊であまり広く世に知られていない「国立大学法人等職員」に関する基礎知識から採用に至るプロセスについて解説していこうと思います。特に、

  • 説明会に行きたいけど遠くて行けない
  • 説明会に行きたいけど日程があわなくて行けない

といった方がお読みになることを想定して執筆しています。


なお、この連載には独自研究を多く含んでいますのでご注意ください。また、最新の情報でない可能性もありますので、エントリー時には必ずご自身の目で最新の採用情報をご確認ください。


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次の記事:第1話 大学職員になるには 〜採用制度の違い〜

とある機関の大学職員 はじめに


大学職員への就職に興味はあるけど説明会には遠くて行けない、就活で忙しくて、という方向けのブログ連載を執筆中です。
とりあえず国公私の違いで1回、仕事内容を軽くさらう感じのを1回、あとはよくわからないと言われている国立大学法人等職員採用試験について2回くらい書く感じでいきます、というか既に大体書き終わっていまして、内容を軽く見直した上で順次公開していきたい所存です。


あ、書き忘れていましたがtwitterを本格的に動かしています。
http://twitter.com/Phantom_T です。
真面目と不真面目を行ったり来たりするジェットコースターロマンスです。


あ、もうひとつ書き忘れていましたが上記の何か風な画像は
とある櫻花の画像生成(http://to-a.ru/)で作成しました。

あけましておめでとうございます

2009年はまさに仕事の年でありました。おかげでサイトなどはすっかり放置の極みになっていますが、2010年は何か形の残ることがしたいですね。

ということで2010年もよろしくお願いします。

酒は飲まれないもの

今週末にボジョレーを飲む会がありますので、ウォーミングアップをしておく必要がありました。

そこでひとつ、こんなものを買ってきました。

「日本の地ワイン」赤でございます。毎度のようにチーズとかちょっとしたツマミとかでいただきました。やや辛口とありますが飲みやすいほうだと思いますよ。価格も1000円台でお手ごろですし、構えず飲むにはいいタイプかと。

国立大学法人運営費交付金事業仕分け結果について

昨日25日の事業仕分け第3WGにて、国立大学法人運営費交付金事業仕分けが行われました。結果は「見直し」。ただし予算を出す出さないという見直しではなく、法人制度の見直しを求められる結果となりました。

今回の仕分けで良かったと思った点は、財務省主導という印象を受けなかったこと。財務省主計局の方は必死に余剰金をアピールしていましたが数秒で議論が終わる(というか議論にもならず)あたりは仕分け人もしっかり予習しているなと。
また、予算ではなく制度設計の議論になっていたところもよかったと思います。本来仕分け人がやるべき仕事は事業の是非を問うのではなく、他の省庁との重複や疲弊した制度を見直してスリムに、効率の良いものにすることだと思います。数名の独断で要・不要を判断するだけの仕分けなど、「国民は」誰も幸せになりません。

しかし、天下り叩きに終始し、例によって民間至上主義になっていた点は疑問です。文科省出身者が大量にいるのがおかしい、というのは大筋で同意できるのですが、現場で頑張っている生え抜き職員については話題にもせず民間経験者に拘る辺り、やはり現場は理解されていないんだなぁ、と思いました。


それにしてもついったーの「#shiwake3」タグなどを見ると、あそこで議論しているのは教員や学生や研究者が殆どのような気が。ついったー上に職員クラスタはまだない(小さい)のかな。